FreeStyle Libre

 FreeStyle Libre


カッターナイフを白い蓋と透明な部品との間にいれていくと分解できる。白い部品は非常に薄くすぐに割れる。基板と透明な部品は一部でつながっている箇所があるので、ここも周囲から一周カッターナイフを入れると取り外しする事ができた。


基板は、外周部分にNFC(Near Field Communication)、13.56 MHzの周波数を利用する通信距離用のアンテナ(インダクタンス:コイル)が配置され、内部に回路が形成されている。
裏面にテストパットを集約。おそらく生産時のファームの書き込みや、テスト時にこの面からプロービングを一括で実施するためと思われ、すべてのテストポートは基板裏面に出すようになっている。



センサ搭載位置周辺に+のマークが形成されている。これはおそらく、センサー部分を自動搭載しており、画像認識のために配置しているものと推測できる。

電池はV377というのが入っていて、日本国内ならR626SWと同じ規格のもの。
20個で650円程度なので、一つあたい30円あまりで調達可能なもの。出力電圧は1.5V。



センサ本体

センサ本体の部分は3つの電極が出ている。この部分で基板と電気的な接触をとっている。針は5mm、太さノギスで測った所約0.4mm。丸い針ではなく、四角い針になっている。このアセンブリの部分は3つのパーツからできておりさらに分解する事ができる。
針に見えるものは、ソフトな材質からなり、一枚のソフトな板を型抜きして、針を作っている感じ。仮に針部分が折れても人体に入っても問題なく、生体親和性の高い材料でおそらく形成しているものと思われる。導電性インクと思われる配線がプリントされており、層状に電極が形成されていた。
この針の部分には、グルコースオキシダーゼがおそらく塗ってあって、グルコースと反応して、電子を電極に放出。その変化を読み取っているというのが基本構造であり原理。乾燥した状態でテスタでそれぞれの抵抗を測定したが絶縁状態であった。
中間部分に金の配線が見えるが役目は不明でセンサ自体の電気的構造はあまり理解できていない。

NFC

 汎用アプリで読むとタグとして見えてISO15693でTI社のものだと読まれる。またNFCのタイプはタイプVと読まれる。タグなので電池を抜いた状態でもこれは読む事ができる。NFCの基本RFIDタグでセンサは形成されている。IoTセンサとして基本動く模様。この情報は、スマホをかざして電波を受けるとその電波をハーベストして基本その電力で測定でき、スマホから給電がかからない測定のために電池を搭載していると思われる。つまりかなり消費電力は小さく、スマホへの血糖値の読み取りを何度しても電池がなくなるという事はほとんどないと言ってよい。

MPU


実体顕微鏡での写真。型番がRF430TAL152HというICである事が確認できる。


あまりうまく合成できていないがパノラマ合成した写真。類似のRF430FRL152Hをアボット社向けにカスタマイズしRF430TAL152Hという型番で専用として出荷している模様。

https://www.ti.com/lit/ds/symlink/rf430frl152h.pdf

RF430TAL152Hの詳細は、ここでTI社自体も公開はしないといっている。

RF430FRL152Hとほぼ同じはずで、通常多くのMPUが3.3Vであるが、MPUは1.5Vの電圧で動作し、電圧が低い分低消費電力で動作する仕様になっている。また内部クロック(おそらくLCフィルタで構成)をもっているので水晶振動子による外部クロックを必要としない。


FRAMを搭載しているので、記録したデータは電源がなくても保持されるようになっている。


ADC0

14bitsのADC(アナログデジタルコンバーター)を3つ搭載していて、それぞれの接続を確認していく。ADC0は、血糖値センサの主たるADCのチャンネル。


回路上は、センサ部分の詳細が不明だが、10kΩの中間電位の変動をADCで読むような形に見える。センサー部分は電気的な抵抗がかわったように見えるのだろうが詳細はわからない。

ADC1



ADC1はSVCCの電圧を測定しているだけの模様。電源電圧がハーベストする電力や電池の出力変化で変動しても、基準となるように、測定してセンサの値を補正するためだと思われる。

ADC2




P1.7をGPIOピンとして使って温度計測しない時はP1.7はLOWで温度を計測する時のみ電流を流す構成のはず。サーミスタはNTC(Negative Temperature Coefficient:温度が上がると抵抗値が下がる)で抵抗を測定しながら手でサーミスタを手で触ると抵抗値が低下していた。
ただ通常のサーミスタの構成と違いサーミスタのいずれの足もGNDに接続されていない。
むしろ、グルコースセンサを検出するADC0に1MΩの大きな抵抗を介してであるが接続されている。入浴等でセンサ温度が高くなると血糖値が下がってみえるのは、この接続のためと思われ、少なくとも血糖値の値は、この回路の構造上、温度が血糖値の測定値に影響を及ぼすのは間違いない。

ANT



ANT(アンテナ)は外周に表、裏ともにインダクタを形成、ANT1とANT2の間にはLC回路の共振周波数が、13.56 MHzになるようにマッチング用のコンデンサが2つ入っている事が確認できる。

推定原価

基本的には、バッテリーレスのIoTの温度センサとほぼ同じ構成であり、センサ部分がサーミスタではなくて、グルコースセンサになっている。NFCでスマホをかざした時だけグルコース値を読むのであればバッテリーレスでNFCの電波のエネルギーだけで動作するものと推測される。スマホから給電されない時に、測定する必要があるので、電池が搭載されている。

https://www.ti.com/tool/ja-jp/TIDM-RF430-TEMPSENSE


https://www.digikey.jp/ja/products/detail/texas-instruments/RF430FRL152HCRGER/5147343


最も値が張るだろうMUPのチップ価格の参考値として、digikeyのホームページで検索をしてみるとRF430FRL152Hの価格を調べると、1000個ロット時のチップの値段は、2.14ドル。日本円で約290円。

基板はおそらく数十円の世界でつくれチップ抵抗等の汎用部品は1個数円の単位と予想され電池も30円程度の代物。センサーを覗いた基板やMPUの電子回路部分の価格は、組み立てコストを含めて原価で500円程度。

トータルの価格は、先端のセンサー部分がいくらかでできるかによる。グルコースセンサそのものは非常に単純な構造で簡素で、シートから切り出しで大量生産していると思われ、グルコースオキシダーゼの塗布もそうたいしたものではないとすると、大きく見積もって500円もしないはずであり、デバイスそのもののコストは、大きく見積もって1000円しないぐらいの価格というのが妥当と考えられる。


まとめ

フリースタイルリブレの構造を可能な限りで解析してみた。

・利用しているMPUは、アボット社向けにTI社が専用に作っている型番の模様。

・ディスポーザブルでのビジネスを実施している事もあり、中身の構造そのものは非常にシンプルに構成で、非常にコストを抑える事を考えた構造。

・基本構造はIoTセンサ。NFCの電波からの給電で基本測定ができてしまう程度に低消費電力。いずれのIoTセンサと同じように必要な時だけセンサに電源を供給する徹底した低消費電力化。

・電波がなくても測定できるように電池が搭載されているが、基本的に電力をほとんど使わず、2週間の使用期限は電力がなくなるからというより、グルコースオキシダーゼによる化学反応が安定してできるのが2週間になっていると推測。

・推定価格は、部材費、組み立てコストを考えて1000円以下。


その他(より詳細)

このICについては、

https://github.com/cryptax/talks/blob/master/BlackAlps-2019/glucose-blackalps2019.pdf

にとても詳細なデータ構造なども踏まえたリバースエンジニアリングの情報がある。




コメント

このブログの人気の投稿

Attiny85とAQM0802A(LCD)のI2C接続

Attiny85 FuseRest

HS101 STM32の自作お手軽オシロスコープ